小児科ガイド:急な症状の対応・健診・予防接種のポイントを解説

ワクチンはその年に流行するウイルスの種類を想定して作られます

乳幼児の死亡例も多い

インフルエンザは「インフルエンザウイルス」によって起こる呼吸器の感染症で、毎年冬に流行します。普通の風邪に比べて重症化しやすく、高熱が続き、肺炎・気管支炎・脳炎・脳症などの合併症も多く、年間100人前後の乳幼児が死亡しています。

症状としては、ウイルスの感染から約1~4日の潜伏期間を経て、まず高熱が出て、喉の痛みや頭痛、倦怠感などが現れます。10代では突然、高いところから飛び降りるなどの異常行動が大きく報道され、インフルエンザ治療薬「タミフル」との関連が疑われましたが、厚生労働省は薬が原因ではないとの見解を示しています。

異常行動や脳炎・脳症は、発熱から約2日の間に起こりやすくなっています。治療をしても、死亡するケースや脳障害の後遺症が残ることもあります。インフルエンザの合併症として現れる脳炎は日本の子供の子供の脳炎の最大の原因で、毎年200~500人が発症しています。

インフルエンザウイルスは伝染力が強く、熱が下がってもその後数日間は他の人に感染する可能性が高いので、家で安静にしていることが大切です。保育園や幼稚園は発症から5日経過し、かつ熱が下がって3日経たないと登園できません。学校は発症から5日経過&熱が下がって2日経てば大丈夫です。

インフルエンザは重症化しやすい病気ですので、かかる前に予防することが大切ですが、予防接種を子供に受けさせるかどうか迷っている方もいるかと思います。これはインフルエンザウイルスにはA型、B型などの種類があり、ワクチンはその年流行しそうなウイルスの種類を想定して作っているため、想定が違ったら意味がないのではないかと考えているためです。

確かにその年によってワクチンが効いたり、あまり効かなかったりすることはありますが、ワクチンを接種すれば、ある程度発症の予防ができますし、仮に発症しても重症化することを防ぐことができます。インフルエンザで最も怖い脳炎・脳症という合併症もかなり予防できる可能性があるため、現段階では多くの小児科医がワクチンの有効性を認めています。2011年からワクチンの接種量が3歳未満で0.25mlの2回接種、3歳から13歳までが0.5mlの2回接種と増えて、世界標準量となったため、予防効果の改善が期待されています。

インフルエンザの流行が著しい近年は、ワクチン接種希望者が急激に増加したため、都合のいい時期に医療機関で接種を受けることが難しくなってきています。早々にワクチン接種の予約が埋まってしまうクリニックも少なくありませんが、子供が小さいうちはかかりつけ医で接種してもらうのが理想です。

インフルエンザのシーズンが到来する前にクリニックに予約方法などを確認しておき、余裕のある接種をこころがけましょう。なお卵を食べて重いアレルギー症状が出る子供はかかりつけの小児科医やアレルギー専門医に相談してください。