小児がんのなかで最も患者数が多い小児白血病

白血病は、骨髄中にある造血管細胞が成熟・分化を中断し、未熟な血液細胞(白血病細胞)が無制限に増殖する原因不明の病気です。
がん化する血液細胞の種類によって、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄白血病(CML)に分類されます。
小児がんのなかでは患者数が最も多く、年間800~1000人が発症していますが、化学療法が進歩した今日、多くの患者さんが治るようになりました。
主な症状として、正常血液細胞の産生が抑制され場合は、貧血のため体が疲れやすい、白血球減少のため発熱や感染症、口内炎、血小板減少による鼻や歯茎の出血などが現れ、白血病細胞が臓器を浸潤している場合には、リンパ節の腫大、肝臓・脾臓浸潤による腹部膨満、歯肉腫脹、骨浸潤による骨や関節の痛み、中枢神経浸潤による頭痛、嘔吐、痙攣などが現れます。
小児白血病の兆候として最も多く見られるのが、白血球減少に伴う感染症による、あるいは白血病細胞から分泌されるサイトカインによって起こされれる発熱が挙げられます。そのほか、貧血、30文以上止血しない鼻血や打撲の覚えのない出血斑の頻発、リンパ節の腫大、肝脾腫などがあります。
骨髄細胞を用いた検査のポイント

白血病細胞は、通常の末梢血の検査では検出できないケースが少なくありません。これは、白血病細胞が未熟な血液細胞であるため骨髄にとどまっている傾向が強いためです。したがって、必ず骨髄穿刺を行い、骨髄細胞を用いて次に挙げる検査を行うことが大切です。
顕微鏡検査…骨髄液の塗末標本をつくり、細胞数や種類、形態異常の有無を確認します。白血病では、細胞数が増加するとともに異常細胞が現れ、有核細胞の20%以上を占める場合に急性白血病と診断されます。また白血病細胞の起源と白血病の型を特定するための特殊染色も行われます。
顕微鏡検査は、骨髄穿刺と染色を合わせて1時間程度で大体の診断がつくうえ、特殊な技術も必要なく、小児科医なら誰でも行えますが、骨髄穿刺は強い痛みを伴うため小児に負担がかかるのが難点です。
細胞表面マーカー検査…血液細胞は、起源や分化段階によって抗原(細胞表面マーカー)を発現します。これを調べることにより、抗がん剤に対する反応性や治療法を決定するうえで必須となる白血病細胞の起源や性質がわかります。
染色体・遺伝子検査…予後と治療法を判断する際の重要なファクターとなる白血病細胞の特定の染色体異常や遺伝子の異常の有無を調べます。検体の質が悪いと正しい結果が得られない、あるいは検査結果が得られるまでに1ヶ月かかるのが難点です。
治療(化学療法、造血幹細胞移植)のポイント

小児白血病の治療の基本は、複数の抗がん剤を組み合わせて行う「多剤併用化学療法」で、再発の危険性が高いと判断された場合には造血幹細胞移植が行われます。
化学療法では、白血病の型に合わせて、作用機序の異なる複数の有効な抗がん剤を投与して、白血病細胞のDNA合成、細胞分裂などを阻害します。
有効な抗がん剤の種類、量、投与期間が確立されているため、治療計画が立てやすいというメリットがある反面、抗がん剤は正常な細胞にもダメージを与えるので、嘔吐、貧血、感染症、出血、脱毛などのさまざまな副作用が現れるというデメリットもあります。
通常の抗がん剤治療で効果が期待できない、あるいは初期の段階で難治性であると判明している場合には、造血の回復を図り、白血病細胞を破壊するために他人(ドナー)の造血幹細胞を移植する「造血幹細胞移植」が行われます。前処置として、大量の抗がん剤投与や全身放射線投与が行われます。移植の際にはドナーと患者の組織適合抗原が一致する必要があります。
ニーズが高まる「がん」と「小児」分野の専門看護師

分野別により専門性の高い看護を提供する目的で誕生した専門看護師(CNS)の資格制度。日本看護系大学協議会が認定する大学院の修士課程(2013年現在、88大学院)で教育が行われますが、1996年の制度誕生して以来、有資格者はおよそ300人にまで増加しました。
精神・地域・老人・慢性疾患・小児など、10ある専門分野のなかでも一番早く生まれたのが、がん診療連携拠点病院などでチーム医療を進める中心的な役割を果たす「がん看護専門看護師」です。その総数も約130名と専門看護師のなかでも最多となっていますが、関東に60人と集中する一方で、一人もいない県(青森県など)もあり、まだまだ不足している状態です。
有資格者の求められる領域は、がん看護教育の企画、倫理調整、現場と研究のパイプ役、地域での啓蒙活動や相談など多岐にわたっており、およそ70%の方が副看護師長以上のポストに就いています。
小児看護の分野では、小児がんを始めとする重い病気の子供のケアをはじめ、退院後の成長と発達を長期的にフォローをチームの協働で取り組む「小児看護専門看護師」が全国で約30名ほどいます。患者さんやコメディカルを対象にした勉強会やセミナーの開催に携わったり、新規に看護外来を立ち上げる際の中心的な役割を担い、地域中核病院・大学病院などで活躍しています。
小児専門看護師の仕事の領域は、「精神・リエゾン」や「家族支援」など他の専門看護師の領域とクロスする部分も多く、これらに興味のある方には特にやりがいのある仕事といえます。